判決とは？/ アイフル
[ 229] 中国新聞 社説
[引用サイト] http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200806140122.html
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「報道の自律性」を最大限尊重した常識ある判断といえようか。旧日本軍の従軍慰安婦問題を扱ったＮＨＫのドキュメンタリー番組改編をめぐる損害賠償訴訟で、最高裁が下した判決である。ＮＨＫなどに二百万円の支払いを命じた東京高裁の判決を破棄し、原告の市民団体の逆転敗訴が確定した。 番組取材に協力したのに、放送された内容が事前の説明と違っていた場合、放送局側に法的責任を問えるのかが争われた。 最高裁は、取材される側の「期待権」は、原則として法的保護の対象とならない、との初の判断を示した。放送界に限らず、広くメディア全般に波及する意義ある判決である。 一審、二審とも原告勝訴。東京高裁は、取材先の期待を裏切ったり、番組内容に変更があったのに説明を怠ったりすれば、賠償責任が生じるとして期待権を認めた。 これに対し、最高裁は「何人からも干渉されない」とする放送法の規定を示したうえで、「どのような放送をするかは表現の自由の保障の下、放送事業者の自律的判断に委ねられている」と指摘。当初の企画と最終的な放送内容が異なることは「当然のことと一般に認識されている」として、取材される側の期待を法的保護の対象として認めなかった。 一方、対象者が取材を受けることが大きな負担になったり、それを取材者が知った上で必ず取り上げると約束する―など特段の事情がある場合は、限定的だが期待権が認められるとした。 期待権については、取材現場では「定義があいまいで、公正な報道の妨げとなる」と懸念する声が強かった。無条件に認められると、政治家や捜査機関など公権力への取材で、相手側の意に沿う報道を常に求められ、現場が萎縮（いしゅく）してしまう恐れがあるからだ。 この裁判では、政治家による番組への「圧力」があったかどうかも焦点だった。高裁判決は「国会議員の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度（そんたく）し、当たり障りのないよう番組を改編した」と認定した。最高裁判決はこの点への言及を避けているが、政治介入に屈するようなことはあってはなるまい。 最高裁判決が出る二日前、ＮＨＫは高裁判決を伝えたニュース番組について、放送界の第三者機関から放送倫理違反との指摘を受けた。「原告側主張に触れずに、ＮＨＫの解釈だけを報じた。公平性に欠ける」との見解は厳粛に受け止めるべきだ。勝訴したＮＨＫだが、手放しでは喜べないのではないか。 放送法では、政治的に公平、事実を曲げない、意見の対立する問題はできるだけ多くの角度から論点を明らかにする―などの条件を満たす限り、誰からも干渉されないとしている。 今回の判決も、こうした報道の在り方にのっとって、自律性を認めている。権力をチェックするためにも、報道に携わるすべての者が肝に銘じておきたい。 クイックリンク →トップ地域社説天風録ブログカープサンフレスポーツ全国･世界写真音声動画安全安心おでかけ炎の鉄板 本ページ内に掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。すべての著作権は中国新聞社に帰属します。 |
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